再増築の家
年輩の夫婦と90歳になる母様が同居するための住宅である。基本要望は50年にわたり増築を重ねた既存建物が暗く圧迫感があり使いづらいため、取り壊して新築したいとのこと。そこには、明るく広がりが感じられると同時に、一つ屋根でありながら互いの距離を確保できる空間が求められた。
打合わせの中で見えて来たのは、家族にとって建築当初の家の印象は良いということ。長年その家に住まわれてきた高齢のお母さまの事を考えても、全てをとり壊してしまう必要はないのではないかと感じた。そこで一旦、建物を増築前の状態まで戻し、そこから現況に合わせた再増築を提案することにした。
まず、最初の建物の軸組を基点に、それらに構造負担をかけないよう、南側に2層分の床を付加して要求床面積を確保した。次に、既存建物と増築部にまたがる屋根をかけて、北側の高窓とトップライトからの採光で、増築により奥深くなる1階中心部に明るさをもたらそうとした結果、建物の中心部が吹抜けて、最初の建物の小屋軸組が露出する空間が生まれることとなった。
そこを家族の共用部分として、東西にエリアを分けて、互いの距離を保てるように建物の対角線上に各々の寝室を配置し、さらに、空間の一体感を損なわなないように諸室の仕切具合を調整していった。そこには新築のようでありながら、基本要望の「明るく広がりのある一体感のある空間」に加え、時間や世代にも繋がりのある空間が生まれたのではないかと思う。
DATA:
所 在 地 :埼玉県熊谷市
用 途:専用住宅
施 工:高橋工務店
延床面積:147.82u
構造規模:木造2階建て
竣 工:2003年
撮 影:山本耕司、峯田建
記載誌 :Jt2003・10号 /Myhome+ 2004夏号